「美容鍼をした後って、化粧水や美容液がいつもより入りやすいの?」
そんな疑問を持ったことはありませんか?
実はこの疑問には、「針を使って皮膚から成分を届ける」ドラッグデリバリー研究という、とても興味深い分野があります。
皮膚には「強力なバリア」がある
私たちの皮膚には、外から異物が入るのを防ぐ「角質層」というバリアがあります。
このバリアはとても優秀で、薬や美容成分の中には、皮膚に塗っただけでは十分に通過できないものもあります。
そこで研究されているのが、
「マイクロニードル」
という微細な針を使ったドラッグデリバリー技術です。
針で「薬の通り道」をつくる?
マイクロニードルを皮膚に刺すと、角質層に非常に小さな経路(マイクロチャネル)が形成されます。
この経路を利用することで、通常では皮膚を通過しにくい成分の経皮吸収・送達を高める研究が行われています。
実際に、マイクロニードルを利用した研究では、薬剤だけでなく、ペプチドやタンパク質など、通常の経皮吸収が難しい物質を皮膚から届ける技術が研究されています。 (PubMed Central (PMC))
つまり、
皮膚に微細な針を使う
↓
皮膚のバリアに一時的な変化を起こす
↓
成分が通過するための経路をつくる
↓
皮膚から薬剤などを届ける
という考え方です。
これは現在も盛んに研究されている「経皮ドラッグデリバリー」の一つです。 (PubMed Central (PMC))
では、美容鍼はどうなの?
ここが重要です。
美容鍼も皮膚に鍼を刺すため、
「鍼によって皮膚に微細な刺激が加わる」
という点では、マイクロニードル研究と共通する部分があります。
そのため、
美容鍼によって皮膚の状態や透過性に一時的な変化が起こる可能性
は考えられます。
ただし、
「美容鍼をした直後に美容液を塗れば、マイクロニードルと同じように美容成分が肌の奥まで大量に入る」
とまでは、現在の研究から断言できません。
マイクロニードル研究では、針の形状・太さ・長さ・刺入深度・薬剤の種類などを細かく設計して、薬剤を届けることを目的として研究されています。 (PubMed)
美容鍼とは目的や方法が異なるため、マイクロニードルの研究結果=美容鍼の効果と考えるのは適切ではありません。
それでも「針×皮膚」の研究は非常に興味深い
現在のドラッグデリバリー研究では、
・固体型マイクロニードル
・中空型マイクロニードル
・溶解型マイクロニードル
・ハイドロゲル型マイクロニードル
など、さまざまな技術が開発されています。
単に「針を刺す」だけではなく、
「針を使って、必要な成分を必要な場所へ届ける」
というところまで研究が進んでいるのです。 (PubMed Central (PMC))
美容鍼の可能性
美容鍼についても、皮膚への微細な刺激によって局所の血流や組織の反応などに変化が起こる可能性が研究されています。
ただし、美容鍼についてはまだ研究が十分とは言えず、ドラッグデリバリー研究で明らかになっていることと、美容鍼で期待されることは分けて考える必要があります。
だからこそ私たちは、
「美容鍼をすれば美容成分が必ず肌の奥まで入る」
とは言いません。
一方で、
「針によって皮膚のバリアに変化を与え、物質を皮膚から届ける」
という考え方自体は、すでに医学・薬学の分野で研究されている非常に興味深い技術です。
美容鍼も、こうした「皮膚と針の関係」という視点から見ると、まだまだ研究の可能性がある分野なのです。
美容鍼は「ただ刺すだけ」ではありません。
皮膚に与える微細な刺激。
そこから起こる身体の反応。
そして、近年急速に研究が進んでいる「マイクロニードルによるドラッグデリバリー」。
「針」という小さな道具には、まだまだ大きな可能性が秘められています。
※本記事は美容鍼とマイクロニードルによるドラッグデリバリー研究を区別して解説したものです。美容鍼による美容成分の経皮吸収促進を直接証明するものではありません。



コメント